山崎研究室

山崎隆の虚実妄言

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 番外編 【寒中見舞いのような…、ボヤキのような…】

平成20年1月吉日。
遅ればせながら「新年、明けまして…」というか「寒中見舞い」ですね。
さて今回は、これからの不動産マーケットの見通しについて語ろうと思う。

金融市場ではサブプライム問題が大騒ぎになっている。
でも僕には、アメリカの悪徳金融資本家のヤラセの匂いがする。
所詮、ファンドなんて、そんなものでしょう?
例えば、リート(不動産ファンド)の暴落についても、
僕は、2005年に発刊の「ヒルズな奴らの錬金術」という本の中で、
ライター木村元紀氏のインタビューに答えながら現在の状況を予測しました。
名前は言えないが、ファンド関係者に知り合いも多いので、
まあ実は、そうなることは、事前に、とっくの昔に知ってたけど…。
だから僕のお客さんにリートで損した人はいない。

昨今はIT化社会とやらで、有益な情報が溢れているようで、
実態は“ガセなネタ”が殆どだろう。
つまり、合法的な詐欺が横行しているのだ。
ファンドの中には、詐欺師たちが仕掛けるゴミ箱も多い。
エンロン事件のように、公認会計士までが共謀していたら、
そういうファンドの中身を見抜くことは不可能に近い。
歴史は繰り返す。いつまでも…。

だから、サブプライム問題の裏側にも、必ず、確信犯がいる。
おそらくファンド組成時の内実を知っているメンバーは、
株の空売りをしたりして、ぼろ儲けしているのだろう。
ファンドなんて、インサイダーしか儲からないようになっていると思う。
まあ、そんなことはどうでもいいか…。

では、ファンドではなく、実物の不動産はどうか?
実物の不動産は、証券という紙っぺらではないので、
将来性のある不動産と、将来性のない不動産があるだけ。
単純に、二極化が急激に加速するだけ。それで、おしまい…。
だから、すべての責任は本人の鑑識眼にある。
価値の無い物件を買ってしまうのも、不動産業者に騙されるのも、
すべては自己責任という訳なのだ。
法律の世界では、無知そのものが罪となる。
無知を理由に過失はエクスキューズされない。

そういう訳で、皆さんに鑑識眼をつけてもらうために、
東京のどこに住むのが幸せか」を著したつもりだったが、
アマゾンの書評に「未調査のエリアが多すぎて実用性がない」と書かれてしまった。
あーあ、僕の心中を察して欲しかったなあ…。
新しい街なんかを調べても、築30年のマンションのデータが無いし、
そういう街には、語るべき歴史もないのだ。
歴史を語ろうにも「その昔は、畑と原野だけでした」で、おしまい…。
郊外型のスーパーとファミレスだけの街なんて解説しても、本にならないでしょ?

さて、現在の僕はというと、年末から年始にかけては、
様々な方々と忘年会やら新年会やらで暴飲暴食を重ねながらも、
その意見交換の中で更に知らされたのは、
地方や郊外のマンション販売が悲惨な状況になっているらしいということ。
ならば、今年は中小ディベロッパーの倒産が続出するのだろう。
嗚呼、南無阿弥陀仏…。

結局、ますます都心の物件しか売れなくなる。
否、都心の物件でさえも、選別が激しくなるのだろう。
郊外の新築物件は全滅で、都心は、勝ち組と負け組に分かれる。
そんな感じかな、今年の予測は…。

まあ予想通りというか、当然だろう。時代は、収益還元価格なのだから…。
僕は、1995年の時点で、拙著「不滅の土地活用」の中で、
不動産マーケットにおける価値観の変化を正確に予言したんだけど、
その時は誰も振り向いてくれなかったなあ…。
今後、絶対に「時価=収益還元価格」という価値観が主流になっていく。
これはもう、絶対に間違いない経済原則なのだ。
なぜなら、日本の不動産の価値は「円」ではなく、
「ドル、ユーロ、元など」からの視点で見るべきものだからだ。
グローバル経済社会においては、賃料の低い街の住居系不動産の資産価値は、
まったくをもって根拠が無いのである。

僕は、そういう主張を、いままで百万回ぐらい(大袈裟な!)繰り返してきた。
2000年の「マイホームは貸せる物件を買いなさい」でも触れたし、
その後の2年間ぐらい、週間現代のコラムにも書いてきた。
延べ人数なら、数百万人の人々に似たような事を伝えてきたハズなのだが、
それでも、不動産で失敗する人が後を絶たない。
結局、馬の耳に念仏だったのかなあ…。
それにつけても、未だに「収益還元法ってナニ?」なんて言っている人がいる。
もう、そういう人は救えない。嗚呼、南無阿弥陀仏…。

ただし、2005年の時点では予測できなかった事柄がある。
不動産の知識と経験だけでは、予測できない世界が、確かにある。
それは、世界的なマクロ経済と不動産価格との間の密接な相関関係なのだ。
そういう意味で、拙著「東京のどこに住むのが幸せか」のテーマは、
そこまで踏み込んだつもりだったのだが、まだまだ勉強が足りないと反省している。
まだまだ世の中には微妙に予測できないことが多すぎる。

でも、絶対に忘れてはならない大原則が一つある。
「都市化とは、工業化社会の進展と中産階級層の拡大と同義語である」ということ。
個々の不動産の価値を暴落させる主因は少子高齢化ではない。
むしろ世帯数は増加しているので、住宅戸数への需要は増えているぐらいだ。
だから、少子高齢化説を強調する評論家たちの頭は、どうかしてると思う。
こういう方々は、論理の構成能力が無いのではないかと、疑うのである。
おまけに彼らは、現場の不動産実務も知らないので、
そもそも消費者に向かって不動産を語る資格など無いのではないか。
ましてや課税が目的で公表される公示地価のデータを使い、
それでもって不動産マーケットを説明する者にいたっては、
明らかに論理は支離滅裂に陥るであろう。
もしかして彼らは、行政の代理人なのか?そう思う。
であれば退場すれば良いのに、いつまでもゾンビみたいに生きているなあ…。

ちなみに僕は、アパートの企画もするし、テナントの立ち退き交渉もする。
各種契約書をマニアックにアレンジしたり、もちろん地上げもする。
実需や投資が目的のマンションも探すし、相続対策もする。
結局のところ、何でもやってしまう。これらは、相互に切り離せないからだ。
まあ、もとは住宅メーカーの営業経験者だから、
皆さんが思っている以上に実務派の人間なのかも…。
けっしてベストセラー(?)作家なんかじゃないですよ、ホント。

そういえば、先日、クライアントの地主の依頼で地上げ交渉に行ってきたが、
相手の地権者は、事前にベストセラー作家が来ると勘違いして、
僕を、床の間がある部屋に通した上に、高級な茶菓子まで用意してました。
よく考えると、ナンカ、変ですよね?
その時は“地上げ屋”なんだから、最初は、フツーは、塩をまかれますよね?
でも相手方は、終始とっても安心していて、業務は簡単に処理されました(笑)。

僕の本業は、あくまでもコンサルタントです。作家は副業です。
くれぐれも勘違いしないで下さいね。
今では、独立系のFP会社は巷に珍しくはありませんが、
一応、老舗の“独立系のFP”なのです。
一応“不動産と相続の専門家”とも呼ばれています。

あれっ…、もしかして話がそれてしまったかなあ?

話題を「予測」の話に戻しましょう。
要するに「不動産は、グローバル経済の中で捉えないと、
全く予測がつかなくなってしまった」ということが言いたかったのです。

日本では重厚長大のハードの生産が中心の工業化社会が終わり、
その結果、中産階級層が徐々に消滅してゆき、
そういう歴史的潮流が、最も不動産の価値に影響していく。
その反対に、中国、インドなどでは、中産階級層が勃興し、
当然、住宅地が不足していく。

つまり日本では、旧来の工業化社会という位置づけの下で、
そういう意味での国力が急激に衰えていることが実感される昨今の中で、
同時に、近代化以降の都市化の潮流が逆流を始めているということ。
それは「不動産を歴史的な文脈で捉える」ということ。

だから、郊外の不動産の価格は、まだまだ下がる。というか、暴落する。
そのうち、そういうエリアの土地は、バナナのタタキ売り状態になるから、
むしろ、郊外で住宅を買いたい層には、お楽しみかもしれない…。

「賢者は歴史から学び、愚者は体験から学ぶ」という言葉がある。
でも、不動産で愚行を体験したら、フツーは立ち直れない。
だから、歴史から予測するという作業は非常に重要になってくる。
「歴史」という言葉を「法則性や論理」と言い換えても良い。

業界には僕と同じように不動産で20年以上のキャリアを持つ人は多いだろう。
でも、これからは、経験と知識だけでコンサルタントを続けるのは難しい。
どうしても分析とか、予測といった分野のセンスが求められる。
つまり、歴史、地理、統計学などの、多面的な能力が必要になる。
だって、誰も、予測がハズれるコンサルタントなんかに仕事を頼まないでしょ?

そう考えると、うわー、やっぱ今年も結構大変だなあ。
そこまで考えながら仕事を続けるのは、「言うは易し」かも。
読書して、調査して、分析して、企画して、実務して…。
また今年も何かと疲れる1年が始まるのかも・・・。
(結局、寒中見舞いではなく、ボヤキでした…)

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