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山崎隆のシェアハウスで幸せになる方法

シェアハウスのマーケティングとは「現在と未来の問題を解決すること」である

戦後から供給されてきた賃貸住宅や分譲住宅の間取りは、ワンパターンでした。
つまり、床面積が6坪前後であれば1K、12坪前後であれば2DKや1LDK、16坪前後であれば2LDK、21坪前後であれば3LDKといった、ワンパターンなゾーニングが、それこそ全国各地で同じように普及していきました。

しかしながら、これらの間取りは、旧公団(現UR)が考案した間取りなのです。

はたして、これが焼け野原からの復興が始まったばかりの、戦後世代の、貧困な発想による間取りだということに気づいている人がどれだけいることか。
繰り返しますが、これは、高度経済成長期のサラリーマン世帯の住宅不足を解消するための間取りなのです。要するに、住宅の大量開発を進めるための暫定的な間取りの規格でしかありません。

戦後の、都市圏で人口爆発が起きていた時代なら、その間取りでも構わないのかもしれません。ですが、今は成熟化した社会です。これら間取りは使い勝手も悪く、もはや通用しなくなっているのです。

たとえば読者は、マンションなどの中で、洗濯物が山のように積んである空間、すなわち洗濯機と洗面器が同じところにある空間の中でそれぞれが並んで使われていることが、はたして良い間取りだと思うでしょうか。
もうそろそろ、ユーティリティ(家事室)という先進諸外国のコンセプトを参考にしつつ、新しい間取りを再デザインしてみるべき時代でしょう。

要するに、戦後の住宅不足の時代に公団が苦肉の策として生み出したゾーニングのパターンは、今となっては「馬鹿の一つ憶え」と言えるかもしれません。

かつて高度経済成長期には地方から工業都市圏に人口が大量に流入し集中しました。
そして、同時に農村に暮らしていた大家族は解体され、新旧世代は分断され、大都市圏では新たな中産階級層(中流層)が勃興し、日本人は“核家族”という単位で生活を始めるようになりました。

都会に出て来た地方出身者が、急成長中の繁忙企業(製造業が主)に就職し、やがて結婚して2人の子供を育て上げる。そのような文脈の中でしか、旧公団の間取りは成立しないのです。

言い換えれば、現在の社会状況に見られるような家族の多様化が、当時は想定されていないのです。男女の単身者が、単純に、円満に、核家族に成長するまでのプロセスにおいて最小限必要となる間取りのバリエーションが大量に提供されてきたに過ぎないのです。

しかし現在、家族の様相は激変し続けています。古き良き時代の日本とは全く異なる多様な家族形態が生まれ、同時に従来の価値観における家族は解体され、もはや異次元のステージに入っています。なんと同性のカップルさえ社会的に認められる時代なのですから。

いつまでも結婚しない世帯、結婚しても子供がいない世帯、子連れで離婚した世帯、子連れどうしで結婚した世帯、親の介護をしながら生活する世帯、一人で暮らす高齢者世帯など、従来の枠に収まらない多様な家族形態が形成されています。

社会構造においても、単身者や高齢者が急増し、農業社会におけるような濃密な人間関係は消滅し、高齢者などの孤独死が問題化するような時代ともなりました。

また、殺伐とした人間関係しか得られないような職場では、そこが鬱病など精神疾患の温床ともなっています。自殺者も減りません。無縁社会化が進行しているのです。

さらに、DVやストーカー殺人などの原因ともなる男女関係の変化は、女性の単身生活を脅かす原因となっています。DVが原因でシングルマザーになってしまう世帯も急増しています。

就労形態にしても、高度経済成長期と比べ激変し、派遣労働者やフリーターなど新しい雇用形態が定着しています。苛酷な労働を強要する会社はブラック企業と呼ばれ、セクハラやパワハラなどが日常的に行われている職場も珍しいことではなくなりました。

つまり、高度経済成長期の時代には、終身雇用制に支えられた「企業内的な共同体」が、戦前の「村落的な共同体」に対して代替的に機能していましたが、今やその社会構造すらも完全に瓦解したということなのです。

これら現象を社会学的に説明すると、ゲマインシャフト型社会(地縁的共同体)から、ゲゼルシャフト型社会(機能的組織集団)へと移行したということになります。
そして、その終末的な段階の現在では、超ゲゼルシャフト型社会(筆者の造語)により、「使い捨て人事による機能的組織集団」の増殖が加速しているのです。グローバリズムがそれを促進させてもいます。

シェアハウスは、これら解体されてしまった人間関係や社会構造について何らかの問題解決を提供できる可能性があります。「一緒に暮らせばとっても楽しい」という単純なニーズへの空間提供だけがシェアハウスのポテンシャルではありません。

公開日:2016年6月29日

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