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山崎隆のシェアハウスで幸せになる方法

やがて“シェアハウス”が賃貸市場の主流になる?

従来からの日本の賃貸マーケットでは、家主層は、長期的な契約が前提の「普通借家権」と中期的な「定期借家権」という棲み分けでテナントに対応してきました。しかし今度は、短期の定期借家権が前提のシェアハウスといった形態が急速に普及してきました。
また同時に、超短期滞在の“民泊”という形態も普及し、ホテルや旅館との垣根を不明確なものにしています。

シェアハウスとは、このような時代背景下に登場した、新しい居住形態の呼称でもあり、それにより今後ますます多様な居住空間が提供されていくことになるでしょう。
期間と賃料という座標軸の中で新形態の賃貸空間が爆発的に普及していくのは間違いないと考えられます。

さて、ではシェアハウスとは、何のために存在するのでしょうか?
あるときは疑似的な家族や共同体を求めて彷徨う単身女性の癒しの住空間かもしれません。あるときはストーカーから身を守ってくれるシェルターになるかもしれません。
また一方では、あるときは外国人とのコミュニケーションを楽しみながら語学力を鍛える住空間かもしれません。
あるときは一緒にスポーツをしたり旅行に行きたくなった時の友達を探す住空間かもしれません。もし仮に同じシェアハウスには住んでいなくても、SNSのお蔭で、友達の友達が友達になるかもしれない。
もしもシェアハウス内の1室が空室になったら、そこに友達を呼んで、皆で楽しく暮らせるようなことも出来ます。

ストーカーが怖いという人にとっては「現実の問題解決をしてくれる」のがシェアハウスです。一緒に旅行に行ける友達が欲しいという人にとっては「夢を叶えてくれる」のがシェアハウスです(より多くの友達に巡り会えるために定期的にパーティを開催している管理会社も少なくありません)。

当初、シェアハウスは「家賃が安く初期費用(家具や家電を揃える費用)が掛からない」という理由で選ばれていました。
手ぶらで入居して、もし気に入らなかったら、また手ぶらで別のシェアハウスに引っ越しができる。そういう気軽さが普及の理由の一つでした。

しかし今後は、昨今のような殺伐とした無縁社会で生活を営む人々の「様々な問題を解決するための空間」が用意されているからこそ選ばれる、という方向性へとマーケットが進化していくことが予想されます。もちろん「一人暮らしでは得られないメリットや楽しみが得られる空間」という理由でも選ばれるのです。

いずれにせよ、まさに現実の問題解決と夢の実現ができる。その2つのコンセプトを睨みながら、シェアハウスは、共用空間のコンセプトを時代に合わせて変化適応させていく。
それにより、賃貸住宅としての差別化を維持し続けることが可能なのです。

つまり、シェアハウスとは、無縁社会化が極度に進めば進むほどニーズが高まるとも考えられます。解体された核家族が流れ着いたコミュニティが、実は、シェアハウスだった。そう社会学的に考えることも出来ます。設計のアイデアと工夫次第で強力なポテンシャルを内包し続けることが可能と言えそうです。

繰り返しになりますが、シェアハウスを企画設計するにあたっては、長期的に安定稼動するための「戦略的なゾーニング」を忘れてはなりません。
一人の専用空間の利用方法は、いつの時代も大きくは変わりませんが、共用空間の使い方は千差万別です。創造的なアイデアには大きな可能性を生む力があるのです。

公開日:2016年6月29日

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