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山崎研究室
山崎隆の虚実妄言
【サラリーマン地主のための戦略的相続対策】の書評
本書の著者、川口氏は、「30年一括借り上げ」の「アパート経営」で有名な
ヘーベルハウスのコンサルティング部門の室長を長年経験してきた
旭化成ホームズの重鎮である。
私は、その川口氏から、アパート・セミナーや相続対策セミナーの講師を
よく頼まれていたと間柄なのである。
旭化成は、おそらく都心部に展開している住宅メーカーの中では、
最強のアパート営業部隊を誇る会社だ。
積水ハウスですら、都心では、旭化成に太刀打ちできない。
それぐらい強い。実は、その鍵を握っていたのが旭化成の営業社員たちの
コンサルティング能力なのである。
そして、その旭化成のコンサルティング部門のトップが著した本となると、
これはもう気になるのだ。
旭化成の営業社員たちは、川口氏の研修を受け、川口氏の作成したカタログを
使って営業していたのだから。
本書では、不動産の相続という問題を、まさに総合的に、戦略的に取り組む流れを扱っている。
どこかの税理士のように節税だけの話に偏る訳でもなく、あるいは、どこかの弁護士のように
遺言や遺産分割だけの話に偏る訳でもなく、まさに総合的に戦略的に考察していくという
スタンスが異彩を放っている。
昨今の相続対策、相続税対策というテーマの中で流布されているのは、その殆どが、
小手先だけのテクニック、手法論、ノウハウなのだ。
しかし、本書の真骨頂は、相続対策というものが、節税、納税、遺産分割、運用といった
様々な問題を、個々に問題解決するというスタンスではなく、総合的にバランス良く資産構造を
最適化しながら、同時に、不動産オーナーが要介護状態になった時や、認知症になった時も含めて、
どのようなシナリオ、ストーリーで個々の資産の管理を遂行していけば良いのかといった
事柄にまで問題提起をしていることである。
このようなレベルの相続の本は、本当の実務者にしか著せるものではない。
世の中には、口先だけの専門家が多すぎるのだ。
本書は、そんな専門家の書籍が氾濫する昨今に鉄槌を食らわす一冊となっている。