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山崎研究室
山崎隆が語る「不動産と相続の教養講座」
第6回 「日本FP協会主催のセミナーにて」 編
平成25年10月6日、有楽町の東京国際フォーラムで、「マイホームの資産価値を見抜く
鑑識眼の磨き方」というテーマで講演をした。
聴講者は、FPや税理士など専門家を中心に、130人ぐらい集まっただろうか。
不動産の鑑定理論を住居系不動産にどう応用していくかという内容を実務的に解説した。
聴講者は皆、真剣に聴いているようだったが、アンケート結果を見ると「講演に満足し
た」という人が約70%ぐらいであった。
ということは、30%は「不満足」だったということか…。
あんなに一生懸命しゃべったのに…。
誰にでも理解される人間になるということは至難の技かもしれない。
だが、よく考えてみると昔の私のセミナーに比べれば、まだ今回はマシな方だ。
かつての私は、実はセミナー内容があまりに革新的だったがために、聴講者から「ダメ出
し率8割」という不名誉(?)をフツーにキープしていた人間なのだ。
あの頃から考えると、まあ上出来だったのかもしれない…。
逆に言えば、約19年も前から私が主張してきたロジックにやっと世の中がついてきた
ということなのだ。ム、フ、フ…。
私は、マイホームを含むすべての不動産の資産価値の根拠は、賃料、すなわち収益性で
判断するべきだということを繰り返し主張してきた。
その証拠こそが、1995年の拙著「不滅の土地活用」であり、次作は、2000年の
「マイホームは貸せる物件を買いなさい」である。
でもね~、あの頃は、よく聴講者にアンケートで酷評されたものだ。
私は、あまりに先に進み過ぎて理解されない可哀想なオジサンだったのだ。
そういえば、2001年の「遺言書を書いてはいけない」というのも、あまり評判が良
くなかったよなあ~。
世の中、何事も利害関係で成り立っている。
だから弁護士にセミナーをやらせると「遺言書を作れば大丈夫」ということになる。
だが、この手のセミナーのスポンサーは、いつも信託銀行だ。
税理士なら「借金してアパート経営をすれば相続税対策は万全」ということになる。
もちろん、この手のスポンサーは都市銀行や住宅メーカーである。
あらゆる対策や方法論は、本来は個別的に判断すべきことなのだ。
目的論を忘れ、方法論が先走ってしまうと、まあ大抵は失敗するのだ。
遺言書を書くのが目的ではなく、円満に遺産分割することが目的なのだ。
だが間違った情報が垂れ流されて誤解が誤解を生んでいる。
「遺産分割協議書」の効力の方が「遺言書」よりも強いということすら知らない素人の
老人を騙すようなセミナーをしてはいけないんですよ、信託銀行のオジサンたちよ。
また、もともと換金性が良かった駐車場の土地の上に、わざわざ軽量鉄骨や木造のアパ
ートを建ててしまうと、その後は「なかなか売れないし、遺産分割もできない不動産」
になってしまい、さらに相続後には「借金の連帯保証人だらけ」という複雑怪奇な相続
にもなってしまうのだ。
そんな無茶な相続税対策を流行らしていたのは、某有名な税理士だったのだ。
アホじゃなかろうか…。
悪気は無かったのかもしれないが、この税理士は経営学を知らなかったのである。
このような投資行為を経営学的な専門用語で説明すると「資産の流動性(=換金性)と
自己資本比率を悪化させる投資行為」と定義できる。
さて、2013年7月発刊の拙著「やってはいけない相続税対策と遺産分割」が書店や
アマゾンで、それなりに売れてはいる。これも、やっと世の中が私に追いついてきたの
だろうと思う。めでたし、めでたし…。
「銀行の言う通りに節税対策をすると破綻するぞ!」という私の警鐘が、ようやく世の
中に聞き入れられるようになったのだ。
まあ私は、理解されようが、されまいが、常に論理的に正しいこと主張するタイプだ。
しかしながら、この「論理的に」というところが一般の人には難解なのだ。
不動産や相続といっても、必要な知識は複雑多岐にわたる。
不動産の鑑定理論だけでなく、税務、法務、建築、金融、保険など様々だ。
そもそも、それらを包括的かつ統合的に理解しろという方が無理なのかもしれない。
この複雑多岐な世界は普通の人間が理解できる限界を超えている。
この論理が理解できるか否かは、その人の能力が左右することもある。
さて、私に「ダメ出し」をした30%の方々には老婆心ながら申し上げたい。
安心して欲しい。別に機嫌をそこねている訳ではない。
そうではなくて、もっと不動産に好奇心を持って勉強を続けて欲しいのだ。
税務や法務も難しいが、一方で、不動産の評価ほど難しいものはない。
不動産の時価が理解できなければ、FPも税理士も成り立たないことを自覚するべきだ。
今回のセミナーでは、かなり易しく解説をしたつもりなのだ。
実務上重要な話もたくさん盛り込んだ。
それでも「不満足」だったということの原因がどこにあるのか熟考して欲しい。
勉強だけでなく実務も常日頃から繰り返すことが大切だ。